大阪市立大学大学院 生活科学研究科社会分子疫学/微生物学分野

研究-Research-

 当研究室では、さまざまな試料(食品や臨床検体など)やフィールド調査から研究対象とする微生物を分離し、それらを遺伝子レベルで同定し、解析し、比較していきます。とても単純なプロセスですが、遺伝子配列を調べると、その微生物の種類だけでなく、それらがどのようにして広がったのかということや、どのくらい危険なのか、あるいは有益なのかを推察することができます。

 当研究室に所属する学生は、いろんなテーマを通して集められた(あるいは自分で集めた)検体試料や微生物群を対象として、培養、遺伝子解析・検出技術、分子生物学の実験技術を学び、統計、分子系統解析などの研究手法を知り、公衆衛生や危機管理などの考え方を身につけることができます。既存の試料だけでなく、本人の興味を優先して研究テーマを調整することもできます。

微生物が広がっていく過程を追う「分子疫学」

 今まさに、コロナウイルス感染症が世界規模で拡散しています。なぜ広がるのかと言うと、宿主同士が接近し、感染者から次の感染者へと病原体が伝播するからです。時にはペットや野生動物が感染源になるような感染症もありますし、食中毒は汚染食品を食べることによって広がります。こうした伝播経路をよく理解して、それを断ち切ることができれば、感染対策として成立します。
 微生物の伝播経路を調べる上で一番直接的で説得力がある方法は、「微生物の遺伝子を調べ、同じかどうかを比較する」ことです(遺伝多型解析)。どうすればそのようなことができるのか、その方法を分子遺伝学的に編み出したり、社会に役立つ科学技術として応用する研究領域を「(微生物の)分子疫学」と言います。

次世代シーケンサーを駆使する「ゲノム科学」

 近年になり、遺伝子を解析する方法はどんどん先鋭化しています。例えば「病原体の全遺伝子配列(ゲノム)をまとめて解読する」といったことが容易にできるようになってきました。ゲノムというのは、その生物を作る遺伝子全体のことです。細菌ゲノムだと、遺伝子は数千個、塩基配列長はだいたい数百万 bp(塩基対)です。ちなみにヒトゲノムだと遺伝子は約2万5千個、塩基配列長ともなると、約30億bp になります。

 この「遺伝子を読む」という技術は、とても応用性が高いものです。膨大な遺伝子配列を一気に読む「次世代シーケンサー」という特殊な装置を使って得られるデータは、ゲノムだけではなくて、例えば「腸内にどんな細菌がいるのかを網羅的に調べる」といったこともできます(メタゲノム解析)。このような研究領域は需要に比してまだまだ経験者が少ない分野ですので、とてもポテンシャルがあります。

次世代シーケンサー(MiSeq)は共同機器をお借りしてデータを取っています。

試料を自分の手で集めるということの面白さ

 世界に二つとない検査試料を用いて微生物を分離するので、時には面白い性質を持つ微生物が分離されることもあります。そのような場合には集中的に研究対象とすることもできます。

 また、これまでは病原微生物に注力してきましたが、これからは腸内細菌のような常在性微生物や、発酵に関わる有益な微生物などにも注目していきたいところです。こちらも、特に学部生からの配属の場合、重要な切り口になると思います。アイデア次第でいろんなことができます。ぜひ一緒に微生物の世界を覗いてみませんか?

これまで扱ってきた微生物(感染症)は以下のようなものがあります。

 食中毒菌各種(病原性大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌など)、結核菌、非結核性抗酸菌(NTM)、レプトスピラ菌(らせん菌)、肺炎球菌、冷水病菌(鮎などに感染)、腸球菌、腸管アメーバ、肝炎ウイルス、デングウイルス、COVID-19、その他

これまで扱ってきた試料には、以下のようなものがあります。

 臨床分離株(ヒトや動物から直接分離された病原性/非病原性微生物)、糞・組織・病変試料(ヒト、野生動物、飼育動物など)、水(河川水、水族館の飼育用水など)、食品(検査試料、養殖魚など)、その他

現在、ご一緒させていただいている共同研究先には以下のような大学・研究機関があります。

 人獣共通感染症リサーチセンター(北大)、北方生物圏フィールド科学センター(北大)、札幌医科大学、山形県衛生研究所、東北大学、国立感染症研究所、結核予防会結核研究所、金沢動物園、霊長類研究所(京大)、大阪健康安全基盤研究所、近畿中央呼吸器センター、神戸市環境保健研究所、岡山大学、福山市立動物園、高知大学、長崎大学、長崎県立大学、台湾国立屏東科技大学

学内では、お隣の中台研と連携しているので、横断的な研究展開も可能かもしれません。

連絡先

大阪市立大学 大学院生活科学研究科
〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138
Tel & FAX: 06-6605-2910
e-mail: twada (at) osaka-cu.ac.jp

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